ペン握って津波記録 孤立に耐えた20時間「この惨事は現実だろうか」
東日本大震災の津波によって自宅で一人孤立した状況で、必死にペンを握り続けた女性がいた。仙台市若林区三本塚地区の無職大友寿子さん(65)。津波で自宅2階に閉じ込められた20時間以上、余震の恐怖と凍える寒さに耐えながら、大学ノート7ページにわたり心情や目の前の光景を書き続けた。
大友さんは3月11日の地震発生時、スーパーにいて、自宅に戻ったところで津波に遭った。1階にいたが、どーんという音とともに窓を突き破って水が入ってきたため、急いで2階へ。翌12日午後2時すぎ、隣家の義弟夫婦らと一緒に自衛隊のヘリコプターで救助されるまで孤立した。
日記には「みんな無事でいてくれ」と家族の安否を気遣う心情や「とにかく生きていなければ」「慌てない」と自らに言い聞かせる様子もつづられている。津波については「濁流の渦」「この惨事は現実だろうか」などと表現した。
一睡もしなかった20時間余りで大友さんが口にしたのは、2階にたまたまあった野菜ジュースだけ。現在は夫らと近くの中学校で避難生活をしている。18歳から日記をつけ始め、書く習慣がついていた。半壊した自宅に残されたこの日記の表紙には「No.35」とあった。
大友さんは「自分を落ち着け、現実を記録しなくてはいけないという使命感もあった。救助された時はほっとして腰が抜けたみたいになった」と振り返った。