放射線拡散…230キロ離れた都内でも観測
14日に2度にわたり燃料棒が完全に露出して“空だき状態”になった2号機。海水をポンプで注入する作業が続いていた未明、爆発音が響いた。経済産業省原子力安全?保安院は、原子炉格納容器内にたまった蒸気を冷やし、水に戻すための「圧力抑制プール」に損傷が生じたと判断した。
有害な放射性物質を内部に閉じ込める“壁”の1つが破れたことになる。外部へ広範囲に放射性物質が漏れたとみられ、3号機付近では15日午前、毎時400ミリシーベルトの放射線量を検出。1時間で一般人の年間被ばく線量限度の400倍に相当する。
4号機の原子炉建屋の壁には8メートル四方の穴が2つ開いた。午前9時半すぎ火の手が上がり、穴から煙が噴き出した。同機は11日の地震発生時、定期点検のため停止中だったが、東電は1、3号機に続く水素爆発が起きた可能性について「否定できない」としている。
わずか3時間半で、原子力施設で爆発、火災が相次いだことを受け、菅直人首相は午前11時から緊急会見。「放射能濃度がかなり高まっている」と述べ、既に出していた同原発から半径20キロ以内の住民への避難指示に加え、20~30キロの住民に「屋内退避」を指示。「冷静に行動するよう、心からお願い申し上げる」と呼びかけた。枝野幸男官房長官は「身体に影響を及ぼす可能性のある数値であることは間違いない」と述べた。
原発事故で放射性物質が放出されると「放射性雲」が発生。風に乗って流れる雲が上空を通過する際に放射線量が上昇するとされる。北風が強かった午前中、関東各地でも高い数値が観測された。約110キロ離れた茨城県東海村では通常の100倍程度の毎時5マイクロシーベルト。「マイクロシーベルト」は「ミリシーベルト」の1000分の1の単位。千葉県市原市では、午前中に通常の4倍だった数値が、夕方には通常の10倍を上回るまで上昇。新潟県魚沼市では午後4~7時の放射線量が最大で通常の約10倍になった。
東京都は0?147マイクロシーベルトで通常の数倍。放射性物質のヨウ素、セシウムなども検出されたが、専門家によると年間に浴びる許容量の100分の1以下という。いずれも健康に影響する水準ではないが、文部科学省は監視強化のため都道府県に観測回数をできるだけ増やすように要請。測定結果をまとめ1日2回公表することを決めた。
枝野官房長官は「高濃度の放射能の放出は継続的ではない」と強調。原発周辺の放射線量の数値も下がってきているとした。ただ東京電力によると「1号機から4号機で、中央制御室の放射線量が高すぎて社員が常駐できず、離れた場所にある緊急時対策本部で数値を監視している」という。