唯一得点のイチロー “無安打無得点”を足でアシスト
甘酸っぱいアルコールの香りが漂う。試合後のクラブハウスは、史上２度目の快挙に沸いた。ビールやシャンパンをかけ合い大騒ぎする選手たち。イチローは「（前回は０３年の）ヒューストンとニューヨークですよね？９年くらい前ですかね」と自ら報道陣に問いかけ「珍しいケースですよね」と振り返った。
言葉通り、珍しい試合展開だった。先発ミルウッドが１四球のみの無安打投球のまま、右足内転筋を痛め、６回で降板。それでも６人の継投でノーヒットノーランを達成した。スコアは１―０。その唯一の得点はイチローのアシストによるものだった。０―０で迎えた７回。２死からバットを折られながら二塁内野安打で出塁すると、けん制を受けた直後、相手左投手のモーションを盗み二盗に成功。今季９個目の盗塁は、相手捕手が送球を諦めたほどの完璧なスタートで依然盗塁成功率は１００％だ。
試合を動かすプレーに「僕からは何もないです」とクールに流したが、エリク?ウェッジ監督は「１点を争う場面での成功は大きな意味を持つ。いい仕事だった」と絶賛した。
イチローにとってノーヒットノーランは、オリックス時代の９５年に佐藤義則の快挙を見届けて以来、１７年ぶり。当時も２安打２打点と援護し「守っていて幸せでした。際どい打球が飛んできたらイチかバチか突っ込もう、と思っていました」と緊張の連続だった。この日は６人の継投とあり「（９５年とは）守っている立場として形が違う」と冷静だったが、同年のイチローは２年連続の首位打者に加え、打点王も獲得。チームもリーグ優勝を飾るなど忘れられないシーズンを送った。
３安打は４月３０日以来、３６試合ぶり。今季はここまで打率?２６７と低調だが、この日再開した交流戦は通算?３３４と得意にしている。低迷が続くイチローだが、チームの快挙に乗じて上昇のきっかけとしたいところだ。
?先発はベーブ?ルース?継投での無安打試合は過去に９度あるが、継投での無安打無得点試合となると大リーグ史上８度目。最初に達成したのは１９１７年のレッドソックスで、先発投手は後に大リーグ通算７１４本塁打で殿堂入りしたベーブ?ルースだった。ただ初回の先頭打者で四球を出すと、審判の判定に文句を言い退場処分。０／３回で交代し、救援したショアが１人の走者も許さない完全投球で無安打無得点試合を達成した。