デモ死者２０人超…ムバラク大統領それでも「辞めない」
約３０年にわたり強権体制を敷くムバラク大統領の退陣を求める大規模デモが２８日にエジプト各地で起きたことを受け、大統領は２９日未明（日本時間同日朝）テレビ演説し「治安維持のためにあらゆる措置を取る」と暴動の拡大を抑え込む考えを示し、政権維持に向けた強い意欲を表明、退陣要求を拒否した。
大統領はまた、ナジフ内閣の閣僚全員の更迭を表明、新内閣を２９日に発足させると言明した。
大統領は合法的なデモの権利を擁護し、政権の汚職体質や失業問題などについて「暴力は解決策にならない」と対話による解決を呼び掛けた。ただ、政権に対する国民の不満は極めて強く、内閣のすげ替えで窮地を抜け出せるかどうかは不透明だ。
オバマ米大統領は２８日、ムバラク大統領と電話会談し、事態打開には暴力ではなく、改革に向けた具体的前進が必要だと伝えたことを明らかにした。
フランス公共ラジオなどによると、２８日のデモでは、治安部隊との衝突で首都カイロや北東部スエズなどで２０人以上が死亡。負傷者は千人を超えた。
国営テレビによると、２８日夜、カイロなど３都市に発令された夜間外出禁止令は全土に拡大、軍部隊も各地に展開した。多くのデモ参加者がこれを無視して屋外に残り、一部が暴徒化。中東の衛星テレビによると、首都では２８日夜に炎上した与党、国民民主党（ＮＤＰ）本部を襲撃するなど、禁止令は事実上機能していない。
目撃者によると、旧市街にある警察詰め所などはほとんどが放火された。政府関連施設への襲撃が拡大、ＮＤＰ本部近くにある銀行など、各地で略奪などが続いている。首都には軍のヘリコプターとみられる飛行音や銃の発砲音が響き、騒然とした雰囲気に包まれた。（共同）