吉田 ロスタイム同点弾!ザックジャパン救った!
ドーハの夜空に1メートル89の巨体が跳んだ。0―1で迎えた後半ロスタイム。敗色濃厚。絶体絶命の危機からザックジャパンを救ったのは国際Aマッチ出場2試合目のDF吉田だった。MF長谷部のクロスに対し、ファーサイドへ走り込んでジャンプ一番。打点の高いヘディングで叩き込んだ。もちろん国際Aマッチ初ゴール。まさに値千金の一撃となった。
「勝ち点1は最低限の結果です。(ゴールは)ミーティングでファーサイドは相手のDFがボールウオッチャーになると聞いていたので狙ってました。もっと早い時間帯に追いついていれば…」。FIFAランク104位の格下相手に土壇場で追いついてのドロー。冷静な状況判断で同点ゴールを決めた吉田だが、さすがに笑顔はなかった。
93年のW杯米国大会最終予選イラク戦。終了間際の失点で、勝てば手に入るはずだった本大会切符を逃し、日本中が涙した「ドーハの悲劇」。その因縁の地で悲劇の主人公になりかけていた。
前半45分。相手MFアブデルファタハにまさかの先制弾を許した。ゴール前で吉田の差し出した左足に当たってシュートコースの変わる不運な一撃だった。もちろん、吉田を責める選手はいないが、同点弾に汚名返上の思いを込めていた。
昨年1月のイエメン戦で国際Aマッチデビューを果たした期待の星も、直後に左足首を骨折する不運に見舞われた。念願の海外移籍を果たすが、VVVフェンロでは約9カ月も実戦から離れた。だが、拾う神はいる。当初から、その潜在能力に注目していたザッケローニ監督は、完全復活する前の昨年9月から吉田の状態をチック。満を持して、このアジア杯に呼び寄せていた。
今大会には闘莉王(右太腿痛)、中沢(左膝痛)ら、これまで日本を背負ってきたDF勢が不在。14年W杯ブラジル大会を目指す吉田には、ポジション奪取の絶好のチャンスだ。だからこそ試合後の吉田は「闘莉王さんなら3点は決めていたと思う。凄いジャンプ?ま、うさぎ年ですから。これで満足せず、次は失点もしたくない」。ザックジャパンを窮地から救った若きDFは最後まで自身に厳しい。1メートル89の体がさらに大きく見えた。