元学生横綱?佐久間山 史上最多に並ぶデビュー26連勝
度胸のよさでピンチをしのいだ。中日の寺下戦に続き、佐久間山は立ち合いで、もろ差しを許した。「この体勢なら相手はつるしかない」。予想どおり千代皇はつって出たが、体を激しくくねらせて抵抗。足が宙に浮いている間に右上手をつかみ、着地と同時に豪快に投げ捨てた。
本割では序ノ口デビューから一度も負けずに、重ねた勝利は26。史上1位の連勝記録に並んだ。幕下の土俵だというのに、館内には歓声と拍手が湧き上がったが、本人は「(記録は)あまり意識してません。焦ったら負け。いつもいい相撲が取れるわけじゃないですから」と涼しい顔だ。
連勝記録よりもこだわるものがある。日大2年で学生横綱のタイトルを獲得。3カ月後の09年2月に父?佐久間幸一さん(享年52)が他界した。その後は母?厚子さん(52)が東京都北区で居酒屋「さくま」を一人で切り盛りしながら、大学に通わせてくれた。「ケガをしないで早く(番付で)上がりたい。母に早く楽をさせたい」。1場所でも早く関取に昇進して親孝行したい。その思いを抱いて日々精進してきた。取組には亡き父の写真をまわしに挟んで臨む。歴史に残る快挙は最初の恩返しになった。
場所後の2月には千葉県にある菩提(ぼだい)寺に父の墓参りに行く。「疲れはちょっと残ってますけど、あと2番。体のケアをしっかりして頑張りたい」。相撲協会の内規では幕下15枚目以内で7戦全勝なら十両に昇進できる。残り2番を勝てば、史上最速となる前相撲から所要5場所で十両の地位をつかむ。両親に吉報を届けるため、まだまだ負けるわけにはいかない。
【アラカルト】
☆生まれ&サイズ 1988年(昭63)8月7日、東京都北区出身の23歳。本名?佐久間貴之。1メートル85、151キロ。
☆相撲歴 小学2年から都内の針ケ谷相撲クラブで始め、埼玉栄高に進学。2年時に高校総体団体、国体少年の部などで優勝。日大時代には2年で学生横綱。
☆趣味 音楽鑑賞。カラオケも得意で十八番は浜田省吾の「もうひとつの土曜日」。
☆唯一の敗戦 入門後は本割で連勝を続けているが、昨年秋場所の序二段優勝決定戦で明大出身の同学年?渡辺(貴乃花部屋)に敗北。
☆憧れ 学生時代は朝青龍の大ファンでガッツポーズなども研究。入門後は同じ右四つの白鵬に憧れている。