「闇の子供たち」と「座頭市 THE LAST」の阪本順治が監督の“覚悟”を語る
CS放送の日本映画専門チャンネルでは5月23日(日)の「日曜邦画劇場」で、阪本順治監督の映画「闇の子供たち」('08年)を放送する。併せて、彼の最新作「座頭市 THE LAST」のメーキング番組やデビュー作「どついたるねん」('89年)も放送されることが決定。「日曜邦画劇場」にゲストとして出演する阪本監督が作品への思いを語った。映画「闇の子供たち」はタイで行われている幼い子供たちの臓器売買や強制売春などの問題を深くえぐった問題作だ。先進国の大人たちが発展途上国の貧しい子供たちの尊厳を傷つけていることを強く批判しながら、臓器売買を追う日本人のジャーナリスト?南部(江口洋介)や人権保護NGOに所属する音羽(宮崎あおい)、南部と行動を共にする若いカメラマンの与田(妻夫木聡)らの運命をたどる。原作は梁石日による同名小説。公開当時、本作はその内容のショッキングさで大きな反響を呼んだ。阪本監督は当時を振り返って、「問題に関心のある一部の方にしか見られないかなと思っていたのですが、公開してみたらどんどん全国へと広がっていき、興味を持ってくれる方がたくさんいたんだと実感できましたね。江口さんや宮崎さん、妻夫木さんら豪華キャストの方々が高い志を持って参加してくれたのも、いい方向に働いたのでしょう。このような“豪華”なキャストが社会的な問題を考え、出演してくれることがもっと当たり前のことにならないといけないと思います」と語った。もともと、本作は監督が発案した作品ではなかった。しかし、「最初は人が言い出した企画でも、どういう問題で、自分に何ができるかと考えるうちに自分がやりたい仕事になるんです」と経緯を明かす。「この作品の場合は、“児童性愛者(ペドファイル)”とは何なのか、人身売買の実態はどうなのか、自分に告発者としての資格はあるのかと考えました。しかし調べていくと、例えばネットにはそういう写真が大量に載っているわけです。そういうものを見ているとだんだん気持ち悪くなり、この衝撃をそのまま観客にリレーしなければならないと感じました。タイで撮影するとマフィアに脅されるなんていう実話もありましたが、それでもタイで撮らなければと現地へ行きました。監督生命を懸けての仕事でした」と心の内を語った。完全なノンフィクションではないが、フィクションでもないこの社会派の問題作は、出演する俳優にも覚悟が必要だったと語る。「妻夫木さんなんかは、『監督、この映画は救いがなさ過ぎるのでは』とおっしゃっていましたね。宮崎さんや江口さんも、タイ語に苦労し、みけんにしわを寄せながら頑張ってくれました。妻夫木さんなんて、タイで本当の牢屋(ろうや)に入ってもらうシーンがありましたからね。その時はさすがに青ざめていましたね」とハードな現場の様子を教えてくれた。深い闇に切り込んだ作品だが、「あくまで劇映画」と監督は語る。「登場人物の運命や物語のスリリングさなどはあくまで劇映画として描いています。見終わった後にじゃあどうすればいいのかは、見た方それぞれに考えてほしい。本作を脳裏にとどめておいていただき、いつか“子供”の問題に触れた時に反応してくれたらと思います」と思いのほどを語った。さて、5月29日(土)に公開される阪本監督の最新作は、香取慎吾が座頭市にふんする「座頭市 THE LAST」。こちらも監督として“覚悟”のいる作品だ。「未来永劫(えいごう)、触っちゃいけない企画だと思いましたよ(笑)。今まで『座頭市』を撮ってきた数々の名監督と比べられるわけですから。でも断るとほかの監督がやっちゃうのかと思うと断りたくなかたんですよ」と座頭市への挑戦意欲は高かったようだ。出演したのは香取のほかに、仲代達矢といった大物から若手俳優のARATAまでと多彩だ。「布団もない貧しい民家を再現し、アシで編んだむしろにはノミがわいたりするようなリアルなセットの中、皆さんが熱い仕事をしてくれました。現場の熱を感じていただける作品になっていると思います」と俳優陣の熱演をたたえていた。