引退の金本 長嶋さんの通算打点に1つ届かずも「納得」
最後に野球の神様からのご褒美が待っていた。9回2死。荒波が放った飛球が金本の守る左翼に飛ぶ。「まさか、まさか。飛んでくるとは」。自ら現役生活の幕引きを行うと、目を赤く腫らしながら試合後の引退セレモニーに臨んだ。
「阪神ファンの皆さま。本当に夢をありがとうございました。そして野球の神様、ありがとうございました」
甲子園が最も沸いたのは6回の第3打席だった。広島時代の93年9月4日の横浜戦(北九州)でプロ初本塁打、初打点を記録し、投手別では最も対戦機会が多かった三浦から中前打を放った。「(試合前には)真剣勝負をしようと言った。楽しかった」。
通算2539本目の安打を放った直後には、自身の持つ球界最年長盗塁記録を更新する二盗にも成功。続く新井の中前打で一気に生還を狙うも憤死し、最後の打席となった7回2死一、三塁は捕飛に倒れ、長嶋茂雄の通算打点にあと一つ届かなかった。「あそこでキャッチャーフライだからユニホームを脱ぐ。納得した」。2年前に痛めた右肩棘(きょく)上筋断裂の影響で、今も腕を伸ばした状態ではビールジョッキを持ち上げることさえ難しい。外角球に腕を伸ばすことを反射的に避けてしまうため、逆方向へ強い打球が飛ばなくなった。確かに「限界」だった。