主ヤクはジャイアン!赤川、危機救ったプロ初完投勝利
?俺はジャイア~ン、初完投――。応援団の鳴り物による大音響に包まれて、赤川は堂々とインタビューを受けた。
「8、9回は身体的にも精神的にもきつかったけれど、いい経験になりました。負けても順位が入れ替わるわけではないと、逆に開き直って投げられました」。敗れれば中日に0?5ゲーム差に迫られる瀬戸際。プロ3年目左腕が初めて9回を最後まで投げきり、チームの窮地を救った。
開き直る。小川監督から授けられた魔法のキーワードだった。直接対決4連戦で、前日まで3連敗で迎えた試合前のミーティング。指揮官は「開き直ってやってくれ。抜かれたら抜き返せばいい。準備はしっかりして、自分の力を信じてやってくれ」と語りかけた。赤川はその言葉を実践し、まるで重圧を感じていないかのように伸び伸びと投げた。
右打者6人を並べた中日打線の内角を果敢に攻め、6回1死まで無安打。最速で140キロにも満たないながら、スピンの利いた直球を軸にツーシームで芯を外した。プロ初完封目前の9回2死から谷繁に適時打を許したが、5安打1失点で今季5勝目を挙げ「(白星の中で)一番うれしい」と八重歯をのぞかせた。
チーム自体の連敗も4で止まり、2位中日を再び2?5ゲーム差に押し戻した。「ナゴヤドームでの戦い方で課題が出たが、チームの力になる1勝だった」と小川監督。ジャイアンがもたらした大きな白星を手土産に、本拠地へと帰る。
▼ヤクルト?相川 赤川は動くボールを持ち味にしっかり投げてくれた。こういう試合で臆することなく投げていたのが一番凄い。
▼ヤクルト?伊藤投手コーチ 赤川はストレートの質がいい。コントロールも良かったので打ちづらかったのでは。
▼赤川の父?典生さん(58)の話 (宮崎市内の自宅で家族でテレビ観戦し)私たちも緊張しました。本当は見に行きたかったのですが、プレッシャーになってはいけないと思って。宮崎県の人間はのんびりして優しい。あれが本人にとっていいペースなんです。
◆赤川 克紀(あかがわ?かつき)1990年(平2)7月31日、宮崎市生まれの21歳。小学2年でソフトボールを始め、中学で軟式野球。宮崎商では3年夏の甲子園に39年ぶりに出場したが2回戦敗退。08年ドラフト1位でヤクルト入団。昨季までの1軍成績は2試合で0勝1敗、防御率11?81。1メートル84、92キロ。左投げ左打ち。